2月8日・9日に横浜で開催された日本口腔インプラント学会第44回関東・甲信越支部学術大会に参加してきました。
今回の大会テーマは「健康長寿をサポートするインプラント治療」。
超高齢化社会が進む日本において、インプラント治療の役割や可能性についてさまざまな専門家の視点から考察する貴重な場となりました。

大会の全体テーマ「健康長寿をサポートするインプラント治療」

この大会で掲げられたメインテーマ「健康長寿をサポートするインプラント治療」には、現代の歯科医療の課題や未来が凝縮されています。
日本はすでに世界でも有数の長寿国ですが、単に長く生きるだけでなく、「いかに健康で快適な日々を過ごせるか」が重視される時代に突入しています。
その中で、口腔の健康と全身の健康は切っても切り離せない関係にあります。
特にインプラントは、失われた歯を補うことで、噛む力を取り戻し、食事や会話といった日常の生活の質（QOL）を大きく向上させる治療法として重要視されています。

総合内科・各専門医からの提言

今回の大会では、メインシンポジウムとして総合内科、消化器内科、循環器科、高齢者内科（認知症）の各専門医が集まり、超高齢化社会におけるインプラント治療の在り方について貴重な提言がなされました。

1. 総合内科医の視点：口腔ケアと全身の健康
総合内科医からは、インプラントを含む適切な口腔ケアが糖尿病や心血管疾患などの慢性疾患の予防・管理にどれだけ重要かが示されました。
口腔内の細菌や炎症が全身に悪影響を与えることは数多くの研究で示されており、歯科と内科が連携する必要性が強調されました。

2. 消化器内科医の視点：消化機能の向上
消化器内科からは、インプラントによって噛む力を回復させることが、消化吸収機能の改善につながるという提言がありました。
しっかり噛むことで、食べ物が適切に消化され、栄養が効率よく吸収されることが、健康寿命の延伸に重要であると強調されました。

3. 循環器科医の視点：口腔と心血管のつながり
循環器科からは、歯周病菌や口腔内の炎症が動脈硬化や心筋梗塞のリスクを高めることについての解説がありました。
インプラント治療を含む総合的な口腔管理は、心血管疾患のリスク管理にも大きく寄与する可能性があるとのことでした。

4. 高齢者内科（認知症）の視点：認知症と口腔の関係
高齢者内科の専門医からは、口腔内の健康が認知機能に影響を与えるという興味深い話題が取り上げられました。
よく噛むことが脳の活性化につながり、認知症の予防や進行抑制に効果があることが示され、インプラントが高齢者のQOL向上に果たす役割が強調されました。

特別講演：インプラント専門医の責務とは

また、今回の大会では、国民や社会に対してインプラント専門医が果たすべき責務についての特別講演も行われました。
ここで述べられたのは、インプラント治療が単なる審美や機能回復の手段ではなく、社会全体の健康を支える重要な柱であるということです。
特に、インプラントの安全性、倫理的な治療、患者との信頼関係の構築が重視され、医師としての責任の重要性が改めて認識されました。
患者一人ひとりに対して最善の治療を提供することが、最終的には社会全体の健康増進に貢献するのだというメッセージが印象的でした。

インプラント治療の未来に向けて

第44回関東・甲信越支部学術大会に参加して改めて感じたのは、インプラント治療が今後さらに重要な役割を果たしていくということです。
超高齢化社会において、単に歯を補うだけではなく、全身の健康を守るための歯科医療の一環としてインプラント治療を考える時代が来ています。
そのためには、歯科と内科、他の専門医が緊密に連携することが不可欠です。
大会を通じて、多職種が連携しながらインプラント治療を通して健康長寿をサポートする未来像が描かれていたように思います。

最後に

今回の大会テーマである「健康長寿をサポートするインプラント治療」は、まさに現代の歯科医療の課題と未来を象徴するものでした。
今後、インプラント治療がますます進化し、多くの人々の健康と笑顔を支える存在となることを確信しました。
この経験をもとに、私自身もさらに多くの知識を身につけ、患者さん一人ひとりに最善の治療を提供できるよう、日々努力していきたいと強く感じています。
超高齢化社会において、口腔から健康を支えるインプラント治療の未来に期待を寄せつつ、これからも新しい知識を吸収していきたいと思います。
次回の第45回大会は、私が理事をしている東京形成歯科研究会が主幹となります。
今回の大会をさらに発展させ、参加者の皆さまに成果を実感していただけるような実りある大会にしたいと考えております。