歯周病と喫煙
学生時代に先生がしきりに言っていました。
「タバコは何も良いことはない。何で気持ちが良いかと言うと、脳が酸欠になるから気持ちが良いのだ。もしも吸いたければ息を止めれば同じ状態だ」と。
冗談を交えた先生のお話ですが、専門的に歯科を学んでいき納得させられました。
タバコを吸うと毛細血管が収縮し血流が悪くなります。
歯ぐきが貧血を起こし、歯を支えている組織も傷み歯にも悪影響が出てくるのです。
長年の喫煙によりニコチンやタールで口の粘膜が過敏になり、ニコチンにより色素が沈着し、歯肉が黒くなります。
タバコを吸うと高血圧の人達が飲んでいる薬(降圧剤)が利かなくなることがあり、肺癌のリスクも高まります。妊婦は早産の危険性が高まります。
タバコ1本につきレモン1個分のビタミンが失われていくのです。
最近、喫煙者の肩身も狭くなっています。レストラン、空港、駅、新幹線、ホテルなどあらゆる場所で制限されています。
喫煙者本人もさることながら、パッシブ・スモーク(受動喫煙)が問題になっています。
自宅でもベランダに出てタバコを吸うので外から見るとホタルのように見えるので、『ホタル族』と言われています。
喫煙場所が減ったこととタバコの値上げなどで喫煙率が減少しています。
食後の一服のために大事な歯を失ってしまうのです。
『これをやめるくらいなら、歯がなくなった方がましだ』とおっしゃる人もいますが、本当にそうなってもよいのでしょうか。
歯周病と喫煙
喫煙は、さまざまな全身疾患や歯周病の大きなリスクファクターです。
喫煙者の年次推移をみてみると、男女共に平成16年に比べ低下し、男性39.3%、女性11.3%となっています。
喫煙率の年次推移(20歳以上)
タバコを吸っていると、歯周病になりやすいだけでなく、歯周病に罹った場合の治療効果もでにくくなります。
喫煙者が非外科的歯周治療を行った場合の改善効果は、非喫煙者の50~75%で、抗生物質の局所投与を併用することでようやく非喫煙者の非外科的処置のみと同じ程度の治療効果を得られるといわれています。
喫煙者は血管が収縮しているため、出血がおこりにくかったり、発赤していなかったりすることがあり、歯周病にかかっていることを自覚しにくい状態となっています。
非喫煙者では、歯石の付着に伴って出血しやすくなります。
しかし、喫煙中止者、喫煙者(一日10本以下)、喫煙者(一日11本以上)の順に出血しにくくなります。さらに、喫煙者(11本以上)では、歯石の程度による出血のしやすさの差はほとんどなくなります。
歯ぐきからの出血は歯周病を見分ける一番の指標ですので、困りますよね。
また、喫煙者ではプラーク量が同じ程度の非喫煙者と比べて歯石が多いことや、歯周病が下顎前歯部や上顎舌側部に多いことも報告されています。
歯周ポケットが4㎜以上の部位における出血傾向
歯周治療の効果は禁煙することで上がりやすくなることが報告されています。
喫煙によって少なくなっていた出血は、禁煙することで増加しますが、これは、血流が回復してくるためだと考えられています。
禁煙による歯周ポケット改善効果
受動喫煙(副流煙)の恐怖
タバコの煙は、喫煙時にタバコ自体やフィルターを通過して口腔内に達する「主流煙」とこれが吐き出された「呼出煙」、及び点火部から立ち昇る「副流煙」に分けられます。
ニコチンなど有害物質の発生は主流煙より副流煙の方が多く、毒性が強いと言われています。
喫煙は、喫煙している本人だけではなく周りの人にも影響を及ぼします。
大切な家族や周りの方への影響について考える必要があります。
また、喫煙していない人は他人の吸っているタバコの煙を吸わないように注意が必要です。
この少ない受動喫煙でも歯周病に影響すると報告されています。