歯周病と骨粗鬆症

    歯周病と骨粗鬆症

    骨粗鬆症は、最近、大きな問題となっています。
    特に女性にとっては年齢を重ねるにしたがって気になる問題です。私たちは骨粗鬆症が歯周病や歯の喪失に影響を与える可能性がある事を知っています。

    長年の研究を通じて骨粗鬆症は骨が破壊されていく病気だと考えてきました。
    口の中には骨がありその骨が薄く脆くなる事により、女性の場合は口腔内の感染に関わる病気が増加すると考えられていました。
    この研究で分かったことは、やはりそこに関連性があるということでした。
    特に骨粗鬆症の傾向が最も強高い高齢の女性は、口の中の骨の量も減り歯を失う傾向がありました。

    研究によると、大腿骨や背骨などの骨の量が少ない方は、おそらく口の中の骨の量も少ないと考えられるのです。
    つまりそれは歯周病のリスクを高めていると言うことになるのです。
    骨粗鬆症とは、骨密度が少なくなる病気で症状が進むと骨の中がスカスカになってしまいます。
    この症状は年齢と共に進行すると言われています。特に女性の場合は閉経後にその進行が著しく、男性と比べても大きな骨密度の減少を示します。
    この原因は女性ホルモンの減少と関連すると考えられています。

     

    骨密度とホルモン

    骨密度がホルモンの影響を強く受けることは分かっています。
    女性はエストロゲンが多ければ多いほど骨密度が上がります。そして口の中の健康にも影響を与えていることが分かっています。
    もちろん、歯を支える顎の骨にも影響を与えますし口腔内の炎症や歯肉炎などが起こる可能性もあります。
    そして女性の場合妊娠している時あるいは歳を取るにつれて歯を失う可能性が高まります。

    こういったことはすべてホルモンの減少に関係していると考えられています。
    骨の量や密度が大変少なく、そして歯肉に感染を受け歯周病にかかっているとそういった情報が体内で伝達されて、骨粗鬆症をもっている女性の場合普通の骨密度を持っている女性に比べてその骨の喪失がより早くなるのかもしれません。

     

    歯周病は骨の病気

    歯周病というのは歯ぐきの病気ではないのです。
    歯周病というのは本質的には骨の病気なのです。

    骨粗鬆症も骨の病気ですから両方がなんらかの関係があるのではないかと考えるのは自然のことです。
    その根拠をたくさんの人達が研究しています。

     

    骨粗鬆症と歯周病の関係

    これまで骨粗鬆症と歯周病の関係は、骨粗鬆症状態にある人は普通の人に比べて歯周病が悪化しやすいと考えられていました。
    しかし最近では歯周病を治療すると、骨粗鬆症の状態が改善するという症例もみられるようになりました。
    歯の治療のために撮影したレントゲンから骨粗鬆症を診断できるようにもなってきています。

    骨粗鬆症治療に伴う顎骨および歯周組織の変化、影響に関しての研究が進んでいます。
    歯科治療の段階で骨粗鬆症の兆候を発見することができるということはとても有意義なことです。
    骨粗鬆症と歯周病の関係は、今後の研究に期待がよせられています。

     

    骨粗鬆症罹患率

    骨粗鬆症とは骨形成と骨吸収の均衡が崩れて骨量が減少し、骨組織の微細構造が弱くなり骨強度が減少する疾患です。
    現在、日本には約1100万人の骨粗鬆症の患者さんがいると推定されていますが、その多くは女性です(女性の骨粗鬆症推定患者数900万人)。

    特に女性ホルモン「エストロゲン」の急激な減少がおこる閉経期の50歳以降から患者数が増加します。
    表のように女性は75歳以上になると半数以上が骨粗鬆症になります。

    骨粗鬆症罹患率

    女性ホルモン「エストロゲン」分泌量の低下は全身の骨密度に大きく影響することが知られていますが、同じく顎骨や歯槽骨の骨密度減少を引き起こすリスクファクターであることも分かってきています。
    またエストロゲンレベルの低下は直接歯周組織の炎症の悪化や、慢性化に関係しているようです。

     

    カルシウム摂取と歯周病のリスク

    カルシウムが不足すると、歯周病や歯の喪失にも影響します。
    アメリカで実施された大規模調査の結果、カルシウム低摂取が歯の喪失のリスクファクターの一つであることも報告されており、カルシウムの積極的な摂取が、歯周病と歯の喪失の予防に寄与することが示唆されています。
    カルシウムが骨の健康に大切な事は良く知られていますが、不足すると歯周病や歯の喪失にまで影響するなんて驚きです。

    カルシウム摂取と歯周病のリスク

    食品カルシウムの一日当たりの摂取量が低摂取群(~499㎎)、中摂取群(500~799㎎)および高摂取群(800㎎以上)と3群に分類し、高摂取群を基準とした時の年齢、喫煙および歯肉出血状態による補正後の歯周病リスクを分析した結果です。
    男女とも高摂取群に比べて、いずれの場合も歯周病リスクが高くなることが示されました。
    特に女性のカルシウム不足は1.5倍以上の歯周病リスクが増加することが報告されました。

    生活習慣病として、歯周病は栄養摂取にも影響を受けていることも報告されており、からだの健康や病気への抵抗力を維持するビタミンやミネラルなどの栄養成分を十分量、バランス良く摂取することは、からだ全体だけでなく口腔の健康維持にも役立ちます。
    歯周病予防の基本はプラークコントロールであることは言うまでもありませんが、それに加え食生活・栄養の面からも歯周病予防に取り組むことは、とても重要な事といえます。

     

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