小児歯科治療
8020運動が推進されている現代の長寿社会において、健康で楽しく一生を過ごすためには、口腔内のケアが重要であることは言うまでもありません。
しかし、人生を豊かに過ごすための大切な取り組みは、乳歯が生え始めるもっと前、実はお母さんのお腹の中ですでに始まっています。
「お子さまの白い歯を守る」こと、ひいては「長い人生を自分の歯で豊かに過ごす」ためには、お母さんの日々のケアが非常に重要です。そんな頑張るお母さんを、妊娠期間中から私たちが応援させていただきます。
年齢に合わせた口腔ケア
胎生3ヶ月~
乳歯の歯胚(種)が出来始めます。
お母さんのバランスの悪い食事や生活状況がお腹の赤ちゃんの歯胚形成に大きく影響します。
妊娠中は、お母さんのホルモンバランスが変化したり、食事が不規則になったり、歯ブラシが上手に出来なかったりと歯周病に通常よりもなりやすくなっています。
安定期にはいって体調が良い時期に歯の定期検診を行うことは、お母さんだけでなくお腹の赤ちゃんのためにも必要です。
6ヶ月~
乳歯が生え始めます。
赤ちゃんを授乳したまま寝かせる事は絶対にやめてください。せっかくきれいに生え始めたばかりの歯が「哺乳ビンう蝕」と呼ばれる前歯の虫歯になることがあります。
1本でも乳歯が生えてきたならば、歯磨きを必ず行って、赤ちゃんの歯を守る事が必要です(前歯だけの場合、お母さんの指にガーゼを巻きつけて、きれいに歯の汚れをふき取ってあげてください)。
また、離乳食が始まったら、口で砕いたり、フーフーと冷ましてから与えることは避けてください。お母さんの口の中にいるバイ菌が抵抗力の弱い赤ちゃんに移動してしまう可能性があるためです。
母乳を与えるときに手指を消毒するように、赤ちゃんに接する時は良く歯磨きをしてお母さんの口の中も清潔にしてから接してあげてください。
1歳6ヶ月~
上下16本(前歯12本・奥歯4本)の乳歯が生えそろってきます。
この頃からフッ素塗布を始めることが推奨されます。生えたばかりの歯は表面がツルツルではなく、大人の歯に比べて自浄作用が少なく、エナメル質も軟らかいため虫歯になりやすいのです。
フッ素は生えたばかりの歯に非常に効果的で、歯の表面のエナメル質を強化し虫歯予防につながります。
3歳~
上下20本のすべての乳歯が生えそろいます。
フッ素塗布・虫歯のチェックを引き続き行うことに加えて、かみ合わせのチェックを行います。
6歳~
6歳前後になると乳歯から永久歯へ生え変わりが始まります。
最初は一番前の歯(中切歯)か、乳歯のさらに奥(6歳臼歯または第1大臼歯)です。
この6歳臼歯は非常に大切な歯でありながら、もっとも虫歯になりやすい歯でもあります。
その理由は、生えたての永久歯の溝が深く、食べ物がその溝に入りやすく、また軟らかいためです。
そして、乳歯の奥に生えてくるため、気づかれにくく歯磨きが行き届かないことも多いのです。
予防策として、定期的な検診とフッ素塗布が重要です。
また、噛む面が完全に出てきたら、溝をきれいに掃除し、シーラントという樹脂を使って虫歯予防を行います。
シーラントによる虫歯予防(左上45小臼歯)
シーラント前 | シーラント後 |
12歳~
12歳頃になると永久歯がすべて生えそろいます。
日本の子供たちの虫歯の数は依然として多いのが現状です。
WHO(世界保健機関)では、12歳児の虫歯数を3.0本以内に抑えることを目標としていますが、日本は世界的に見て下位に位置しています。
この結果を受け、WHOからはフッ素の使用が不足しているとの勧告が出されています。
乳歯のむし歯治療
虫歯の進行状況を確認します。
噛む面だけの場合
虫歯のところだけ取り除き白い樹脂をつめます。
基本的に1回の処置で終わります。
歯と歯の間の場合
虫歯を取り除き型を取って、詰め物を入れるため、2回程度の処置が必要です。
虫歯の進行度により、局所麻酔が必要となる場合があります。
歯全体の大きな虫歯や神経の治療を必要とする虫歯の場合
歯が弱くもろくなっているため、乳歯冠と呼ばれる銀歯をかぶせることがあります。
神経の治療を行うために3~5回程度の処置が必要です。
虫歯の進行度により、局所麻酔が必要となる場合があります。
(虫歯が大きく神経が膿をもっているような場合は処置の回数が増えることがあります)
*乳歯は目で見たときに小さな虫歯であってもエナメル質・象牙質の歯牙組織の成り立ちにより歯の中で風船状に大きく広がっていることが多く見られます。
また、永久歯に比べて歯の神経の位置が表層に近いため、小さな虫歯でも神経の治療が必要となることがあります。